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【2014年2月28日新刊】

『歳月ー鄭智我作品集』
著:鄭智我、翻訳:橋本智保著
発行:新幹社
値段:1,800円+税
発行:2014年

 1990年に『パルチザンの娘』を発表した当時、作家チョンジア鄭智我は政府の弾圧を受け、数年間筆を折ることになるが、1996年、朝鮮日報社主幹の新春文藝で新人賞を受賞し、文壇デビューを果たす。その後今日にいたるまで、動乱の韓国近代史を生きてきた平凡な一個人が、その矛盾に満ちた歴史を前にしてどのような選択をし、またどのような犠牲を強いられたのかを探求し続けてきた。本書ではそれに加えて、老いるということ、記憶を失くすということ、人生を再生するということの意味を追求した作品が注目される。革命家だった両親だけでなく、共に人生を歩む人々を見つめる作家の視線に、これまでにはなかった暖かい憐憫の情を感じる。本書には2006年第7回「李孝石文学賞」を受賞した「風景」が収録されている。

収録作品の紹介:
 モノクロ映画を思い起こさせる「風景」では、百歳を目の前にした呆けた母親と、とっくに還暦を過ぎているが一度も世間と交わったことのない男が、チリ智異山の中腹にある一軒家の縁側に黙って座ったまま、春の陽射しを浴びている。朝鮮戦争当時、訳もわからずパルチザンについていった二人の息子と、家を飛び出したきり帰ってこない息子を待ちながら、母親は歳月の重さにひたすら耐えてきた。ついには生理的な記憶すらも忘れてしまった母親に、男は懐かしさと憐憫の情を感じずにはいられない。母親が失った過去の記憶は、男の青春でもあるからだ。
パルチザンを扱った作品は他にも「釘」「純情」「歳月」などがある。
 「歳月」は、韓国現代史という大きな時代の流れの中で、生涯夫だけを心の拠り所として生きてきた妻が、パルチザンだった夫について山にこもったこと、息子を死なせてしまったことなどを思い出しながら、すでに記憶を失くした夫に向かって独り言のように、今まで誰にも言えなかった心のうちを曝け出す。
 収録された短編のほとんどがパルチザン出身か、あるいは痴呆症の老人が登場する中、「二十三歳、四十三歳」のように、肉体の欲望に目を覚ます女性が登場する作品もある。
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by shinkansha | 2014-03-05 17:13 | 出版物